秦野市で今年もたばこ祭りが開催された。この祭りの間、渋沢駅に鉢植えの煙草の花が展示されていたので、撮影した。

煙草の花の様子が、芥川龍之介の『煙草と悪魔』という短編小説に、次のように書いてある。
「幾月かたつ中に、悪魔の播いた種は、芽を出し、茎をのばして、その年の夏の末には、幅の広い緑の葉が、もう残りなく、畑の土を隠してしまつた。が、その植物の名を知つてゐる者は、一人もない。フランシス上人が、尋ねてさへ、悪魔は、にやにや笑ふばかりで、何とも答へずに、黙つてゐる。
その中に、この植物は、茎の先に、そうそうとして、花をつけた。漏斗のやうな形をした、うす紫の花である。」
そして、この後で、善良な牛商人がちょっとしたことから悪魔に騙されて、この植物の名を言い当てないと、体と魂を悪魔に奪われてしまうことになる。
牛商人は、そうわされまいと、しきりに考えて、一つの策を講じる。それは、自分の飼っている牛を、悪魔が育てたその植物の畑に放ち、畑を踏み荒らさせるということだった。
悪魔は、それを見て、
「この畜生、何だつて、己の煙草畑を荒らすのだ。」
と怒鳴る。その様子を隠れてみていた牛商人が、『煙草』という名前を知り、命拾いするという話だ。
煙草を日本に舶載したのは、悪魔であるという芥川の説明には、妙に納得するのだけれども、よく考えてみると
おかしいことに気づく。それは、この悪魔が日本語で怒鳴るのだろうか?という疑問である。
英語なら、
Damn! Why are you messing my TABACCO Field?
となるのだろうか?
怒鳴るほど興奮していたら、やはり悪魔の母国語で叫ぶだろう。それを日本の牛商人が聞き取れるとも思わない。芥川先生は、少し失敗したのか?それとも、悪魔はわざと日本語で叫んだのだろうか?
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